大うつ病性障害に対する経頭蓋磁気刺激時の行動活性化療法

こちらの論文は、

のページに引用しています。

行動活性化療法との併用は有効

こちらの論文は、TMS治療の前に行動活性化療法を併用することで治療効果が高まる可能性についてのパイロット研究になります。

TMS治療のために頻繁に通院すること自体が行動活性化療法のようなものですが、意識的に行動活性化療法を行っていくことで、TMS治療の効果が増強される可能性があります。

行動活性化療法自体に副作用などは認められませんので、取り組む価値があります。

行動活性化療法について詳しくは、以下のページ(こころみ医学)をご覧ください。

行動活性化療法

論文のご紹介

TMS治療と行動活性化療法の論文をご紹介します。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

背景

行動活性化(BA)療法と経頭蓋磁気刺激(TMS)は、それぞれ大うつ病性障害(MDD)の成人外来患者の治療に有効であることが示されている。

両治療法を組み合わせることで、相乗的な抗うつ効果が得られる可能性がある。

方法

我々は、6週間の標準的なTMSコースに簡易版のBAを導入する新しいプロトコルを開発し、11名の連続して治療を受けた治療抵抗性うつ病(TRD)の外来患者を対象にパイロットテストを行った。

BAは、TMSの開始前に、毎日5〜10分の間隔で行われた。

BAへの関与は、TMS治療中のセッション間の「目標」の設定と達成を追跡することによって測定された。

症状の改善度は、IDS-SR(Inventory of Depressive Symptoms)、PHQ-9(9-item Patient Health Questionnaire)およびSHAPS(Snaith-Hamilton Pleasure Scale)を用いて測定した。

結果

BAとTMSの併用療法を受けた患者は、平均77%の目標達成率を示し、IDS-SR、PHQ-9およびSHAPSの平均スコアがそれぞれ47%,55%および39%低下するなど、全体的な症状の改善が見られた。

BAは、TMSを実施する際の日常的な作業に容易に組み込むことができた。

限界

今回の調査では、BA+TMSの治療効果をTMS単独と比較するには十分な検出力がない。

結論

修正版のBA療法を標準的なTMS治療の急性期コースに組み込むことは、実行可能であり、忍容性も高く、TRD患者のTMS治療の効果を増強する可能性がある。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年3月27日

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