うつ病とアルツハイマー病のリスク:システマティックレビュー、メタアナリシス、メタ回帰分析

こちらの論文は、

のページに引用しています。

うつ病の既往は認知症リスクを2倍にする

こちらの論文は、うつ病とアルツハイマー型認知症のリスクに関する関係を調べたメタアナリシスになります。

認知症は「物忘れ」が進んでいく前に、様々な症状となって現れることがあります。

うつ状態も認知症に先立つことがあり、経過を見ていたら認知症が進行していくこともあります。

その一方で、うつ病であれば認知症にどれくらいなりやすいのでしょうか。

これまで発表されている研究を精査し、結論としてオッズ比で1.90~2.03で認知症になりやすいとなりました。

このようにうつ病であれば、およそ2倍認知症になりやすいと言えます。

うつ症状はしっかりと治療することで、アルツハイマー型認知症のリスクを低減できる可能性があります。

論文のご紹介

アルツハイマー型認知症のうつ病へのリスクについてのエビデンスになります。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

背景

うつ病の既往歴は、後年のアルツハイマー病(AD)発症のリスクを高める可能性がある。この関係を明らかにすることで、アルツハイマー病のリスク因子や疾患メカニズムの理解が進むかもしれない。

目的

うつ病とADの関係について系統的にレビューし、メタ解析を行う。

データソース

MEDLINE、PsychLit、EMBASE、BIOSISの電子書誌検索において、病因の研究に関連する検索語と、うつ病やADに関連する用語を組み合わせて検索し、論文の参考文献リストを確認した。

研究の選択

後にADを発症した患者と発症しなかった患者が含まれており、うつ病患者と非うつ病患者を対比したデータを持つ研究を対象とした。

うつ症状と認知状態の連続的な測定に関連する研究は除外した。

データ抽出

数値データは3人の審査員が独立して抽出した。また、観察研究の質の指標を評価する尺度を用いて評価した。

うつ病が観察された時期からADとして診断された時期までの間隔に関するデータがある場合は、それも収集した。

データの統合

ランダム効果モデルを用いたメタ解析の結果、ケースコントロール研究のプールオッズ比は2.03(95%信頼区間、1.73-2.38)、コホート研究のプールオッズ比は1.90(95%信頼区間、1.55-2.33)であった。

リスク増加の結果は、感度分析でも頑健であった。

うつ病とADの診断の間隔は、ADの発症リスクの増加と正の相関があり、うつ病は前駆症状というよりも、ADのリスク因子である可能性が示唆された。

結論

うつ病の既往歴は、後にADを発症するリスクを高める可能性がある。

この関係は、ADの独立したリスク因子を反映している可能性がある。

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年7月29日

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