アルツハイマー病の認知機能障害に対するrTMS:ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシス

こちらの論文は、

のページに引用しています。

アルツハイマー型認知症にTMSが有効な可能性あり

こちらの論文は、アルツハイマー型認知症に対するTMS治療の認知機能改善効果を検討したRCTのメタアナリシスになります。

アルツハイマー病の認知機能改善を調べたRCTのみを網羅的に集めて、精査した研究になります。

これによると、TMS治療がアルツハイマー型認知症の認知機能を有意に改善することが示されました。

より効果がある条件として、

  • 20Hzの高頻度刺激
  • 高学歴
  • 軽症
  • 10セッション以上複数回
  • 複数部位をターゲット

である方が、効果的であったとされています。

症例数がまだまだ少ないですが、TMS治療がアルツハイマー型認知症の認知機能改善に効果が期待できるかもしれません。

ただし、効果が持続するかどうか、進行をおさえるか、BPSDを軽減するかなど、臨床的にTMS治療が適切かどうかはわかっていないことも多いのが実情です。

論文のご紹介

アルツハイマー型認知症のrTMS治療のRCTについてのメタアナリシスをご紹介します。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

背景

反復経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation:rTMS)は、アルツハイマー病(AD)に対する非侵襲的な脳刺激法である。

高頻度または低頻度によるrTMSは、それぞれ大脳皮質の活動を増強または抑制すると考えられている。

本メタアナリシスは、ランダム化比較試験(RCT)を対象としたもので、AD患者の認知機能に対するrTMSの有効性をまとめ、その潜在的な影響因子を明らかにすることを目的としたものであった。

方法

Pubmed、Embase、Cochrane Library、Web of Scienceに掲載された文献を検索し、適格な研究をスクリーニングした。

rTMSの治療効果の評価には、標準化平均差(SMD)および95%信頼区間を用いた。

また、サブグループ解析を行い、影響因子を検討した。

結果

240名の患者を対象とした10研究15試験が含まれた。

偽刺激と比較して、rTMSはADの認知機能を有意に改善することができた(SMD、0.42;95% CI 0.18-0.67;P = 0.0006)。

サブグループ解析の結果、単一部位よりも複数部位でrTMSを受けている参加者、および10回以下ではなく10回以上のrTMSを受けている患者で、有意な認知機能の向上が示唆された。

単独の治療法としてのrTMSと比較して、認知トレーニングを同時に行うrTMSでは、より大きな改善が得られるようであった。

また、20HzのrTMSは、10Hzや1HzのrTMSよりも効果的であると考えられた。

さらに、高度な教育を受けた患者や軽度から中等度のAD患者は、高度な教育を受けなかった患者や重度の認知症患者に比べて、それぞれrTMSの恩恵を受けやすいと考えられた。

結論

現在のエビデンスに基づけば、rTMSはADの認知機能障害に対する有効な治療法であった。

サブグループ解析の結果をさらに検証するためには、大規模なRCTが必要である。

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年7月29日

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

TMS治療は怪しい?問題点と誤解を解説

体に負担を与えずに脳にアプローチする治療法として、近年注目を集めている「TMS治療法」。心の病気に対する、新たな治療効果が期待されています。 世界中でエビデンスが蓄積されつつあるTMS治療ですが、日本でも正式な適応が認め… 続きを読む TMS治療は怪しい?問題点と誤解を解説

投稿日:

当院のうつ病TMS治療成績(2022年1月~2022年12月末)

治療成績 病名:うつ病 期間:2022年1月~2022年12月31日 症例数:117名(30回実施214名) 寛解率56% 反応率79%程度 2022年1月から、2022年12月末までに30回以上実施したうつ病・うつ状態… 続きを読む 当院のうつ病TMS治療成績(2022年1月~2022年12月末)

投稿日:

当院の強迫性障害TMS治療成績(2022年1月~2022年12月末)

治療成績 病名:強迫性障害 期間:2022年1月~2022年12月末 症例数:25名(データ:16名) 30%改善:50% 2022年1月から、2022年12月末まで1年間の全症例のうち、強迫性障害として急性期治療終了と… 続きを読む 当院の強迫性障害TMS治療成績(2022年1月~2022年12月末)

投稿日:

人気記事

子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

「長い子育てを終えて、やっとひとりの時間ができる」 「子育て中はできなかったことを、たくさん楽しもう!」 そんな風に、子育てを終えた解放感を味わう方もいるでしょう。ですがその反面、強い喪失感や虚無感に苦しむ方も存在します… 続きを読む 子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

投稿日:

「燃え尽き症候群(バーンアウト)」とは?なりやすい人や治療法を解説

「燃え尽き症候群(もえつきしょうこうぐん)」とは、その名の通り、それまでの意欲や熱意がまるで燃え尽きたように消失してしまう状態のことです。 もともとは意欲があった人が、突然やる気を失う。いきなりの変化に「あんなに熱意があ… 続きを読む 「燃え尽き症候群(バーンアウト)」とは?なりやすい人や治療法を解説

投稿日:

精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

「車がないと会社に通勤できない」 「仕事で車を運転する必要がある」 「生活するうえで、車がないと困る」 日常生活の中で、車の運転が必須になっている方もいるでしょう。 それは、精神疾患の治療をしている患者さんも同じです。お… 続きを読む 精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

投稿日: