ブレインフォグとは?うつ病の症状?
ブレインフォグとは、正式な医学用語ではありません。
そのまま訳せば「脳の霧」になりますが、頭の中にモヤがかかったような状態をさすようです。
それがうつ病の症状だとしたら、TMS治療による効果が期待できるかもしれません。
ブレインフォグとは?
「ブレインフォグ」とは、頭の中にモヤがかかったようにぼんやりして、物事が思い出せない状態を表す言葉になります。
医学用語としてではなく一般的に使われている言葉になります。
「新型コロナ流行によるストレスで、ブレインフォグの症状が出る人が増加した」とテレビやインターネットで取り上げられる機会が増えたことから、世間的にもブレインフォグというキーワードの認知度は高まりつつあります。
ブレインフォグを治療するにあたっては、次のことに気を付ける必要があります。
病名ではなく症状
第一に認識していただきたいのは、ブレインフォグは医学用語ではないことです。
「私はブレインフォグでしょうか?」と当院にご相談に来る方もいらっしゃいますが、診断名としてブレインフォグの名前がつくことはありません。
いわば概念として、医療業界以外で使われている言葉です。
私が精神科医としてブレインフォグを知った経緯も、TMS治療を行っている中で、患者さま側からご相談を受けたためです。
あくまで思考抑制や制止を疑わせるような症状で、その背景には様々な原因が考えられ、個人差があるでしょう。
ですからブレインフォグは、「病名」ではなく「症状」ととらえたほうが適切です。
ブレインフォグの症状
「自分はブレインフォグなのではないか」と感じている方は、以下の症状を抱えていることが多いです。
- 頭がぼーっとして集中できない
- 物事が思い出せない
- 相手の話が頭に入ってこない
- 今までできていたマルチタスクができない
- テレビがうるさく聞こえる
- おっくうで考えがすすまない
実際に上記の症状を感じても、「ブレインフォグと診断がつかないなら、精神科に行っても意味がない?」と不安を感じる方もいるでしょう。
ですが、このような症状が生活に支障があるのでしたら、それは症状として原因を考えていく必要があります。
ご自身では「ブレインフォグかもしれない」と感じている症状が、うつ病の症状としてあらわれていることもあるのです。
ブレインフォグとうつ病の関係
「今までできたことができなくなる」「頭の中にモヤがかかっているようで集中できない」といったブレインフォグの症状は、うつ病の患者さまが感じる症状とよく似ています。
うつ病の症状として、以下を例にあげます。
- 気分が落ち込む
- 意欲が低下する
- 倦怠感がある
- 相手の話や本の内容が理解できない
- イライラすることが増える
- 好きだったことを楽しめない
睡眠障害や食欲減退など、体の不調も多く出るうつ病ですが、心の症状にフォーカスを当ててみると、ブレインフォグの症状と類似しているものがあるとわかります。
いわゆる「思考抑制(しこうよくせい)」や「制止(せいし)」と呼ばれる、うつ病で生じる思考障害のひとつです。
例えばこの思考抑制を、ブレインフォグの症状であるとご自身で判断している可能性があるのです。
「脳疲労」という言葉もみつけましたが、うまく表現されていると思います。
気分の落ち込みといった典型的なうつ病の症状が目立たなくても、こういった思考障害がストレスの蓄積などであらわれてくるケースがあります。
ブレインフォグとプレゼンティーイズム
また、うつ症状までいかなくても、「Presenteeism(プレゼンティーイズム)」と呼ばれる状態になっている可能性もあります。
プレゼンティーイズムとは、心身の不調によって、出勤時に思うようにパフォーマンスが取れない状態のことです。
2000年頃から主に北欧と米国で研究が始まった概念で、現在では定義が定められるまでに研究が進んでいます。
プレゼンティーイズムの定義は、以下の4つです。
- 体調不良で休むべきなのに出勤している状態
- 出勤している労働者の健康問題に関連した労働生産性損失
- 病気を持ちながら出勤している状態
- 病気を持ちながら出勤している状態
プレゼンティーイズムの原因は様々なものがありますが、原因のひとつとして、「うつ症状が回復していない状態である」可能性も考えられます。
プレゼンティーイズムは産業衛生(職場のメンタルヘルス)での概念ですが、サインバルタでのプロモーション活動の中で盛んに用いられ、医師にも理解されるようになった概念になります。
ブレインフォグの治療法
ブレインフォグの治療法としては、その原因によってもアプローチが異なります。
大切なことは、ご自身ではブレインフォグだと感じていたものが、「うつ病やうつ状態かもしれない」という点です。「ブレインフォグ」という曖昧な概念の中には、他の精神疾患からくる症状が隠されている可能性があるのです。
うつ症状以外にも、睡眠時無呼吸症候群や睡眠障害、こちらもあいまいな概念ですが、慢性疲労症候群なども原因となることがあります。
ご自身でブレインフォグだと判断する前に、専門家に相談していただき、原因に合った治療を受けることが大切です。
うつ病治療とブレインフォグ
ご自身ではブレインフォグと感じていた症状が、うつ病やうつ状態と判断された場合には、治療で改善が期待できます。うつ病の治療は、大きく以下の4つにわけられます。
- 休息
- 薬物治療
- 心理療法
- その他の治療
基本的には休息と薬物治療で回復を目指すことが多いですが、お薬に抵抗がある場合も含めて、薬と相性が悪い方も存在します。
そういった方には、「4.その他の治療」に含まれるTMS治療を提案する場合もあります。
TMS治療のブレインフォグへの有効性
TMS治療は、磁気を用いて脳の特定部位を刺激する治療法です。
お薬に頼らない新しい治療法として2019年6月に日本でも認可され、近年日本国内でも注目が高まっています。
ブレインフォグの治療法として、TMS治療の有効性はまだ確認されていません。
TMS治療で回復する可能性があると言えるのは、うつ病症状が疑われる方に対してになります。
ご自身で感じているブレインフォグの症状が、専門家が診察してうつ病の症状と判断すれば、TMS治療にて改善を目指すことも可能です。
ブレインフォグについてのまとめ
今回は、近年認知度が高まっている「ブレインフォグ」について解説しました。
記事のポイントを、以下にまとめます。
- 医学用語で「ブレインフォグ」は存在しない
- ブレインフォグの治療方法はまだ確立されていない
- ブレインフォグの症状だと思っているものが、うつ病やプレゼンティーイズムの症状の可能性はある
- ご自身でブレインフォグだと判断せずに、専門家の診察を受けることが大切
- うつ病と診断された場合は、治療で改善が期待できる
- うつ病治療で薬の効果を感じられない場合は、「TMS治療」の選択肢もある
TMS治療をご検討の方へ
適切なTMS治療を行っていくためには、TMS治療の知見はもちろんのこと、前提となる心の治療経験が非常に大切です。
当院には12名の精神科医が在籍していますが、両方に精通した医師2名のみ(2021年1月現在)が担当させていただきます。
TMSは治療選択肢のひとつとして、患者さんの立場にたってご相談させていただきます。
TMS治療にご興味お持ちの方は、東京横浜TMSクリニックにご相談ください。
執筆者紹介

大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医
カテゴリー:ブログ 投稿日:2021年2月6日